さて、サヌールである。いまやこの街の名前を口にしただけで、懐かしく、恋焦がれる気持ちになってしまう私だが、出会うまでには少々遠回りをして、4回目のバリ旅での訪問となった。
長期滞在者が多いサヌール
サヌールはバリで最初に観光開発されたビーチリゾートで、老舗のホテルが多い。1930年代の欧米におけるバリ島ブームでは、別荘も多く建てられた。そういう経緯からか、サヌールは欧米の長期滞在者が多いと言う。
確かに、サヌールで宿泊したグリヤ サントリアンには、仕事はリタイヤしたであろう世代の、欧州からか米国からか豪州からかはわからないが、とにかく白人の人たちが結構いた。10人くらいのグループもいて、夜遅くまでプールサイドで楽しそうに宴会をしていた。どれくらいの期間滞在しているんだろう。少なくとも我々のように3泊5日の弾丸ツアーではないはずだ。うらやましい。
日本で言えば熱海
私はサヌールのことを友人に説明するときに、バリで一番古い観光地で、日本で言えば熱海みたいなところ、と言っている。
サヌールは、ホテルや別荘は多いが、ヌサドゥアのように地域から地元の人を排除しているわけではなく、むしろたくさんの人が住んでいる。昔ながらというよりは都市化した住まい方なのだとは思うが、それでも 現地の人たちの暮らしがすぐ近くにあるのがいい。
熱海も、1950年代には新婚旅行の定番だったというが、今は移住地としての価値が高いのではないかと思う。旅行に行くとしても、観光に行くというより、ゆっくり滞在しにいく場所だ。もちろん、地元の方がたくさん住んでいる、普通の街でもある。
けっこう良い線の喩えだと思うのだけど、どうだろう。関東圏の人でないとぴんとこないかも…? (西日本だとどこと言ったらいいんだろう)
街角でチャナンをお供えする女性。
ニワトリが チャナンに添えられたお米を狙ってます!
サヌールの店
サヌールの街には、外国人向けの店もたくさんあるのだが、なんというか、観光地くさくない店が多い。おそらくそれは、長期滞在者が多いからなのではないか。外来者が入りやすくはしてあるのだけれど、その店での食事が特別なことではない、日常を過ごしている人向けの店が多い印象 がある。
そしてもちろんそういう店は、とても居心地が良い。ついつい長居してしまう。
それに、かなりローカルな食堂から、5コースディナーを出す高級店まで、グラデーションをかけたようにいろいろなレベル感の店がある。今日は地元の人に人気のローカル食堂(ワルン)にチャレンジしようとか、バリ舞踊の出し物があるレストランを予約してみようとか、徒歩圏内でいろいろ楽しめるのが良い。
観光地ではなくて「滞在地」
考えてみれば、もはやサヌールは「観光地」ではないのかもしれない。バリ島でいわゆる観光ツアーを車で回っている人は、ウブド方面で遺跡やライステラスを見て、ブノアでマリン・アクティビティして、ウルワツでケチャッを観て、ジンバランの砂浜でイカン・バカールを食べて、スミニャックで買い物してるから、サヌールには来ないもんね。そうか、だから居心地がいいのか。
観光するための場所ではなくて、滞在するための場所。それも、無理して作られたのではなくて、何十年もかけて、地元の人と滞在者と街とが、絶妙なバランスを作り上げてきた、そんな街なのかもしれない。